めぐり逢えたのに
私は、その日の夜、ごはんを食べに行った時に拓也を問い詰めた。

「浮気してる?」
「万里花さん、何を急に言い出すの?」

拓也はこんな時でも落ち着いて飄々としていた。

「西城彩香。すっごくいい雰囲気だって、スタッフの間で評判だったよ〜。」

私は鼻息荒くせまった。

「ああ、彩香ちゃんね。可愛いよね〜。」

他人事のように人懐っこい笑顔で事も無げに言うので、私はうっかり同意してしまいそうになる。

「うん。……じゃなくて!その可愛い西城彩香とたのしそーにしゃべっているのはどこの誰よ。」
「だって、仕事だもん、しょうがないでしょ。」
「拓也はね〜、みんなにニコニコし過ぎなの。その笑顔向けるの私だけにして!みんな勘違いしちゃうから。」
「……そうなんだよ。」

拓也はにんまりしながら私に相づちを打つ。

「……何、肯定してるのよッ。」
「彩香ちゃん、オレに気があるらしくて、もう、撮影の後、毎日毎日一緒に食べに行きましょう、だの、飲みに行きましょうだの、相談がありますだの、大変なんだよ。しかも隙あらば二人きりになろうとするしさー。」

拓也はケータイを取り出すと、彼女とのラインを私に見せた。

「ホラ。」

そこには、確かに西城彩香からの誘いがうじゃうじゃ来ていた。

「………ちゃんと断ってる?」
「当たり前でしょ。ま、でも、撮影あるし、雰囲気悪くしたくないし、これでも気苦労はいろいろあるんだよー。万里花さんに来てもらったのは、そういうこともあったの。」
「彼女がいるんだって?」
「はっきり言うと万里花さんが困るでしょ。だから、謎のオンナってことでね。」

謎のオンナか〜、悪くないんじゃない?!? 私がにやにやすると拓也はぷっと吹き出した。

「可愛いなあ、万里花さん。今、悪くないんじゃない?! って思ったでしょ。」

私は顔を赤らめる。

「思ってない。」
「思った。」
「思ってないってば。」

いきなり、拓也がテーブル越しに私にキスをしてきた。

「……思った。顔に書いてある。」


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