めぐり逢えたのに
テレビをつけると、どこのワイドショーも小野寺拓也のセレブ不倫の話で一杯だった。
私の名前こそ出て来ないものの、「日本を代表する大企業の社長の一人娘で、夫はさる有名代議士の御曹司」なんて言われて(バレバレじゃないか)、「セレブの乱れた私生活」とか「小さい頃から我が儘で甘やかされて育った」とか、さんざんな言われようだった。

見てると気分が悪くなってくるので、私はぶちりとテレビを消して、でも、一人で静かな部屋にいると、どうしてもスキャンダルのことで頭が一杯になってしまい、何も手につかなかった。

佐藤ばあがやって来たとき、私はカタカタ震えながら、放心状態で涙を流していたらしい。
「らしい」というのは、私は、佐藤ばあがやってきて、私の手をとってずっと隣りに座っていてくれたことにさえしばらく気がつかなかった。佐藤ばあが温かい紅茶を出してくれて、私も少し笑ったり話したりする余裕が出てきた。



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