めぐり逢えたのに
私はそれから毎日のように彼の部屋に遊びに行った。
彼は相変わらずそっけなかったけど、私は全然平気だった。

それからは、いつ、いきなり行っても女の人がいるなんてことはなかったし、彼がいない時には、必ず何時頃帰ってくるかのメモが置いてあった。私は、そのメモを見るたびにうちのルールみたいだ、と思っておかしくなった。

「別に予定なんてケータイで連絡くれればいいじゃん。」

私は彼が部屋に戻って来た時、メモをひらひらさせながら笑った。

「あ、そっか、そういえばそうだなー。でも、ケータイだと連絡取れないのが不安で。」
「どういう意味?」

私がきょとんとしていると、彼は照れくさそうな顔をした。

「最初に、来てから全然音沙汰なかっただろ。絶対また来ると思ってたのに、何の連絡もなかったから、2回ぐらいこっちから連絡したんだ、実は。」
「本当に?! 全然知らなかった。」
「うん。何で連絡してこなかったの。」
「だって、パパとママが…、」

言いかけて、私は躊躇した。家族の話をすると、彼はいつも不機嫌になるから、なるべく意識して避けるようにしていたのだ。
私が話をやめても彼はしつこく理由を知りたがったので、私は「絶対怒らない?」と、彼に約束させてから、一連の経緯を話した。最後に、

「だから、ここに来てメモを見るたんびに、うちのルールみたいだな〜って実は可笑しくなってたの。」

と笑ったら、彼も、

「そっかー。知らない間に、君んちのマネをしてたんだね、オレは。」

って朗らかな顔を見せたから、私はものすごく嬉しくなった。
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