めぐり逢えたのに
「いいなあ……、佐々倉さん。一緒に写ってる写真、私、一枚も持ってないんです。高校の頃、両親から写真に撮られるのをひどく禁じられていたから、二人の写真を撮るなんて思いつかなかった。彼にはお金がなかったから、どこかに出かけることもほとんどなかったし。」

言いながら、涙がぽとぽと落ちてきた。

たとえ別れるという結果が同じであったとしても、私も、こんな風に彼と笑った写真が欲しかった。確かな思い出の形が欲しかった。

私に残されたものは空になった彼の部屋の鍵だけだった。

「………万里花ちゃん、知ってる? あの時のいきさつ。」

佐々倉はふいに訊ねて来た。私は、佐々倉から思ってもみなかった話を聞いた。
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