めぐり逢えたのに
寒さが少しずつ和らいでくるのが分かる頃、いつものように小野寺拓也がけいこを終わらせて家に帰ろうとすると、外に止まっていた大きな黒塗りの車の運転席から四十代後半ぐらいの男が出て来た。
仕立てのいいスーツを着てまっすぐ背筋を伸ばして歩くその男は、いかにもエリートサラリーマンの様相を呈していた。
その男は、拓也にすっと近づくと、「小野寺拓也さんですか。」と聞いて来た。たいていの人が好感をもつ、丁寧な柔らかい物腰だった。
拓也が立ち止まって頷くと、その人は名刺を差し出した。
「私、戸川自動車で、秘書をしております竹本と申します。戸川が小野寺さんに一度お目にかかりたいと申しているのですが、お時間ございますでしょうか。」
拓也は男と一緒に車に乗り込んだ。
拓也が連れて行かれた先は、高級フレンチの店だった。拓也は、えりのよれたTシャツの上に袖のすり切れたパーカ、穴の開いたジーンズに古ぼけたスニーカーという出で立ちだったから、さすがに場違いな思いでいたたまれなかった。
奥の個室に案内されて、恰幅の良い紳士がゆったりと座ってワインを楽しんでいるのを目にした時、彼に不思議な好感を抱いた。
愉快にワインを飲んでいるその姿が無邪気に見えたからだろう。
仕立てのいいスーツを着てまっすぐ背筋を伸ばして歩くその男は、いかにもエリートサラリーマンの様相を呈していた。
その男は、拓也にすっと近づくと、「小野寺拓也さんですか。」と聞いて来た。たいていの人が好感をもつ、丁寧な柔らかい物腰だった。
拓也が立ち止まって頷くと、その人は名刺を差し出した。
「私、戸川自動車で、秘書をしております竹本と申します。戸川が小野寺さんに一度お目にかかりたいと申しているのですが、お時間ございますでしょうか。」
拓也は男と一緒に車に乗り込んだ。
拓也が連れて行かれた先は、高級フレンチの店だった。拓也は、えりのよれたTシャツの上に袖のすり切れたパーカ、穴の開いたジーンズに古ぼけたスニーカーという出で立ちだったから、さすがに場違いな思いでいたたまれなかった。
奥の個室に案内されて、恰幅の良い紳士がゆったりと座ってワインを楽しんでいるのを目にした時、彼に不思議な好感を抱いた。
愉快にワインを飲んでいるその姿が無邪気に見えたからだろう。