めぐり逢えたのに
戸川は、拓也の身辺調査をしたことなど隠しもしなかった。乾杯をして一口ワインを飲んだところで前菜が運ばれてきた。それは、マグロとアボカドを一口大に切って他の野菜も加えて彩り良く盛られた一品で、添えてあるソースが絶妙だった。ワインが進む一品だった。
「刺身をこんな風に食べるのも美味しいですね。」
拓也が前菜に舌鼓をうっていると、戸川はさらりと答える。
「確かにたまにはこんな食べ方も面白いな。寿司ばかりじゃ飽きてしまう。」
「僕は、寿司も滅多に口に入れられませんけどね。」
拓也は軽口をたたいたつもりだった。
「娘に食べさせてもらってないのか。」
拓也のフォークを動かす手が止まった。戸川をまじまじと見る。
「金目当てだと思ってたんですか。」
「いや。ただ、うちの娘は、君が食べたいと言えば食べさせるだろう、と思っただけさ。いづれにしてもそんなことはどうでもいいことだ。」
戸川は食べる手を休めることもなく、しごく淡々と会話を続ける。
「どうした? 君の口に合わなかったかい?」
戸川は拓也の手が進んでないのに気付いたようだった。
「いえ、あなたはどういうつもりで僕を呼んだのかなあ、と思ってるだけですよ。」
「さっきも言ったろう、君のことを知りたいんだよ。」
「どうして。」
「娘が急に結婚したい人がいるって言い出してね。そんな話にまでなってるのか、と正直驚いている。君がプロポーズしたのか。」
「いえ…、その話にはちょっと事情がありまして……」
「事情?」
戸川は拓哉に話を促したけれど、拓也はいくら何でも高校生の彼女の父親に、おたくのお嬢さんはやりたいがために結婚したいみたいですよ、とは言えないと思って、言葉を濁した。拓也が話す気配がないのを見て取って、戸川は続けた。
「じゃあ、君の方は結婚する気がないと思っていいんだね。」
「刺身をこんな風に食べるのも美味しいですね。」
拓也が前菜に舌鼓をうっていると、戸川はさらりと答える。
「確かにたまにはこんな食べ方も面白いな。寿司ばかりじゃ飽きてしまう。」
「僕は、寿司も滅多に口に入れられませんけどね。」
拓也は軽口をたたいたつもりだった。
「娘に食べさせてもらってないのか。」
拓也のフォークを動かす手が止まった。戸川をまじまじと見る。
「金目当てだと思ってたんですか。」
「いや。ただ、うちの娘は、君が食べたいと言えば食べさせるだろう、と思っただけさ。いづれにしてもそんなことはどうでもいいことだ。」
戸川は食べる手を休めることもなく、しごく淡々と会話を続ける。
「どうした? 君の口に合わなかったかい?」
戸川は拓也の手が進んでないのに気付いたようだった。
「いえ、あなたはどういうつもりで僕を呼んだのかなあ、と思ってるだけですよ。」
「さっきも言ったろう、君のことを知りたいんだよ。」
「どうして。」
「娘が急に結婚したい人がいるって言い出してね。そんな話にまでなってるのか、と正直驚いている。君がプロポーズしたのか。」
「いえ…、その話にはちょっと事情がありまして……」
「事情?」
戸川は拓哉に話を促したけれど、拓也はいくら何でも高校生の彼女の父親に、おたくのお嬢さんはやりたいがために結婚したいみたいですよ、とは言えないと思って、言葉を濁した。拓也が話す気配がないのを見て取って、戸川は続けた。
「じゃあ、君の方は結婚する気がないと思っていいんだね。」