めぐり逢えたのに
拓也はドキリとした。

「あなたは?あなたは許してくれるんですか。」

それは、拓也がまさしく聞きたいことだった。

「そんなわけにいかないだろう。」

何を当たり前のことを、と言わんばかりに戸川は白けた顔をした。

「………」

「私は、娘を大学に行かせて、卒業の頃に結婚させたいと考えている。娘がふさわしい相手を見つけられるように、パーティーやちょっとした会合にちょくちょく連れて行っているんだがね、娘は君に夢中だ。いっそ君が金目当てで娘と付き合ってるなら、こっちも対処がしやすいんだが、どうやら君も娘のことが好きらしい。まあ、しばらくは、と思って静観していたんだが、そろそろ軌道修正しておいた方がいいだろうと思ってね。」

「彼女の人生は彼女のものだ。いちいちあなたが口を挟むべきことじゃあないでしょう。それとも、彼女を自分の人生の駒か何かだと思っているんですか。」

「私は、戸川自動車の経営者の一人として、会社をよりよくしていく義務があると思っている。幸運なことに、私は今まで順調にやってこれた。言うまでもない事だが、娘はその恩恵に預かっている。だから、彼女ができることで、社の発展のために寄与できることがあれば、彼女はやるべきなんじゃないだろうか。」

「それで政略結婚ってわけですか。あなたは、彼女自身の幸せなどどうでもいいとおっしゃるんですか。」

「そこなんだよ、君。」

戸川はため息をついてワインを飲み干した。



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