めぐり逢えたのに
「私は、会社のためにもなって、なおかつ娘が愛せる相手を見つけることが出来れば一番いいと思っていた。いわゆるウィン・ウィン・ストラテジーってヤツだ。しかし、君がいるおかげで娘は他の男に全く目を向けてくれない。」

「だから、彼女と別れろと?」

「私もいろいろ考えてみたんだがね、娘が君と結婚して会社のためになる方法は何かないだろうか、と。しかし、君が役者として成功してもしなくても、面倒なことになるとしか思えないんだ。結婚となれば、親戚付き合いもろもろやっかいな問題に巻き込まれることは君もわかるだろう。ましてや、役者なんてお世辞にも堅気な商売とはいえない。」

娘の幸せを、と口ではいいながらも、結局は戸川を優先する彼の冷酷さが意外であった。マリカの口から聞かされる父親像からは、戸川は娘のことを思いやるよき理解者のようにしか感じられなかったからだ。
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