めぐり逢えたのに
「君は、私の事を冷酷だと思っているんじゃないか?」

図星をつかれてぎくりとした。戸川はフンと鼻で笑って話を続ける。

「冷酷なぐらいじゃなきゃ、会社を守る事はできないよ。それに、一言言い訳させてもらうならば、私がもし本当に冷酷ならば、そもそも君に会う事なくやるべきことをやっている。私にはそのくらいの力はあるからね。」

暗に脅しているのだろうか。それとも、言葉通り、言い訳をしたいだけなのだろうか。
戸川の本心を計りかねた。

最も戸川の心中なんてわかるわけがないのは、彼を見た瞬間に分かっていたことだった。

「私は、娘のために別れてくれ、などと頼むつもりはない。戸川のために、いや、戸川を良くしたい私のために別れてくれ、と頼むのが筋なんだろうな。恐らく、私はどっちにしても君と娘の仲を裂くだろう。だから、傷がこれ以上深くならない今のうちに、君の方で娘から手を引いてもらいたいのだ。」

うまいやり方だと拓也は感心した。
戸川が、もしも、娘のために、と言ったならば、拓也は反発して意地でも万里花と別れるとは言わないだろう。
戸川は、会社のために娘を犠牲にさせる、とはっきり宣言したわけだ。

それが良い事かどうかは別として、正直な態度には違いなかった。



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