きみと、春が降るこの場所で
そんな予感はしていたけれど、昨日詞織は河川敷に来なかった。
久し振りに朝からみっちり受ける授業は退屈過ぎて、何度もアクビを噛み殺す。
天気は朝から大荒れだ。
春の陽気はどこに身を潜めたのか、台風よりは幾らかマシなだけの大雨に風。
しばらくは河川敷には行かないようにしよう。
どうせ道は泥だらけ、芝生は湿っていて寝転がれたものじゃないだろうから。
それに、授業をサボる時間でもなければ、わざわざ河川敷に行く用事もない。
家には帰れないし、ゲームセンターにも入れないから、たまたま河川敷にいただけの事で、詞織に初めて会った日が特別だったわけじゃない。
…………まさか、いるわけないよな。
今日に限って来ているなんて事はない、はずだ。
だってこんなに大雨で。
そもそも桜が咲く頃に会おうとは一言も言っていない。
それなのに、なんで。
詞織があの場所にいるような、そんな気がするんだよ。