小夜啼鳥が愛を詠う
「またそれ言う!もう!猿ゆーな!」
ムキになる薫くんは、やっぱりかわいくてかわいくて……。
「はぁい。でも猿でも好きよ。……てか、今は全然猿じゃないけど。頼之さんによく似てきたねえ。すごく、かっこいい。……だから、心配。」
素直な気持ちだった。
薫くんは、驚いたように私を見て、それからくしゃっと笑った。
「はは。まさか、桜子がヤキモチ焼いてくれるって。嘘みたい。超うれしいわ。」
「……焼くよ。てか、とっくに焼いてるよ。悶々としてる。……みゆちゃん、4月から同じ中学でしょ?……すっごく心配。」
「みゆ~?前もそんなんゆーとったな。ほんまに妬いとったんか。……でも、桜子以外は、ないわ。」
キッパリそう言った薫くんに、ホッとした。
「……しんどいんは、俺ばっかりやと思ってた。……気づいてやらんで、悪かったな。」
薫くんはそう言って、私の腕を引き寄せた。
あ……。
すっぽりと、薫くんの腕に包まれる。
うわぁ……うれしい。
有り得ないほど、ドキドキしてる。
見上げると、薫くんの精悍なお顔。
……小学生でこんなにかっこいいのに……これから、薫くん、どこまで素敵になっちゃうんだろう。
「薫くん……。大好き。」
もう、何度めだろう。
タガがはずれたのか、私はまたもや気持ちを伝えて、幸せに浸る。
まだ慣れないらしく、薫くんはその都度、何ともいえない表情になる。
「俺も。いや。俺のほうが、絶対、好きやし。」
なんの勝ち負けを競うつもりなのか、薫くんは胸を張ってそう言った。
そうして、私を優しい瞳で見つめる。
……キスがくる……。
そっと目を閉じて、私はその時を迎えた。
(了)
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一応、本編終了ということになりましょうか。
ですが、お話を続けます。
完結ボタンはお預けですw
須磨でのお話は、拙著短編「めぐり逢いける縁は深しな~冬の須磨にて~」のアナザーサイドストーリーです。
あちらは薫くん視点でしたが、今回は桜子ちゃん視点。
ということで、お互いの心を推し量った描写に食い違いが生じていることがおもしろいな、と。
恋愛とは、大いなる誤解、ということで。
引き続きよろしくお願いします。