初恋を君に


「今年もお疲れ様でした〜。乾杯!


『かんぱーい!』


みんなでグラスを合わせる。
庶務、総務合同の忘年会だ。
同じ階でしかも女性が多いとなれば
話が盛り上がるのは必然だ。

結局上条と連絡を取らずに週末を迎えてしまった。


「文ちゃん。呑んでる〜?」


「ともみ先輩!!」


松本ともみさん庶務課の3つ先輩で
1年目の頃から何かと目をかけてくれていた。お子さんを出産して今年、産休から復帰したのだ。


「今日はお子さんは?」


「旦那とお留守番。たまには羽伸ばさなきゃ〜!」


そう言いながらビールのグラスを持ち上げる。


「なかなか話できてないけど最近どうなの?」


「なんですか〜急に。」


向かいに座るともみ先輩が顔を近づけて
きた。そして小声で、別れたんでしょう?と聞いてきた。


「はい…」


「で?」


「…で?とは?」


もう!次ってことよ〜!
と大きな声で言いわっははは〜と笑う
ともみ先輩。


「次なんてすぐできる訳ないじゃないですかっ!!」



「ふーん?てっきり…ねぇ?」


「もう!てっきりってなんですか!?」



ともみ先輩はニヤリと笑って、
おにーさん!ビールおかわり!と叫んでこちらに向かい直る。



「ついにくっついたのかと思ったのよ。なんだ〜まだだったか。まっともかく結婚式には呼んでよね。」


「もう!なんですか?それ〜!意味不明なんですけどっ…」



「まぁ今度ゆっく~り聞かせてよ!とりあえず飲むわよ〜。」


そう言ってともみ先輩はグラスを持ち上げたのでガチリッとジョッキをぶつけた。

てっきりとか、ついにとか…
恐らく上条の事だとは思うが、
一線を超えてしまった後でも
社内では至って普通にお互い過ごしていたはずなのに…

さやかもくみちゃんも同じような事を
言っていた。

私にとって上条は、
仲のいい同期で優しいけれど、
恋愛は面倒で特定の彼女は作らず
来るもの拒まず去るもの追わず。
…って言うか、
私、上条に来てないけど?
むしろ上条が…?


「文さん?顔を赤いですけど…大丈夫ですか?」


隣に座るくみちゃんの声で我にかえった。


「えっ?あっ…本当?お鍋に火が入ったから暑くなっちゃった。ちょっとお手洗い行ってくる。」


「びっくりしましたよ〜。了解です!」


くみちゃんの声に送られて席をたつ。
頬に触れると確かに熱かった。
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