初恋を君に
「あれぇ〜。誰かとお電話でしたぁ?」
「うん。染谷課長。ちゃんと帰れたか確認の電話だった。はい。これ着て。」
差し出したスエットを受け取るくみちゃんの顔が曇る。
やはり何かあったのだろうか。
「…誰にでも優しいですもんねぇ。分け隔てなく…」
声をかける前に、着替えてきま〜す。と言ってくみちゃんまた洗面所へ向かった。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して飲もうとした時、洗面台からくみちゃんの呼ぶ声がした。
「どうしたの?」
「余計なお世話かも知れませんが…このTシャツ…」
そう言っておずおずと差し出したTシャツは上条のメンズ用のものだった。
うわぁ…やってしまった。
いつもの癖というか、最近の流れというか…
「…ごめん。ちょっと待ってて。」
寝室へ急いで向かい、私のTシャツを持って戻る。
「こっちどうぞ。ごめんね。」
「…はぁーい。」
さっきまで曇っていた顔が楽しい事を見つけた子供のような顔に変わっていた。
恥ずかしい…
私も酔ってるのかしら?
額に手をあててソファに座り込んだ。
時間をあけず、くみちゃんがリビングへ戻ってきた。
メイクを落とすために顔を洗ったおかげか酔いと眠気が少し収まったようだ。
ニヤニヤしながら私の隣に座る。
「くみちゃん。染谷課長と何かあった?」
「あぁ〜…それは。うーん…大丈夫です。ちょっと自分の中で整理してからお話ししたいです。それより〜」
うわぁ…きた。
先手を打ったつもりなのに、
切ら返された…
「上条さん、よく泊まり来るんですか〜??」
「あのね…ちがうから。」
「違くないですよぉ〜。いつから付き合ってたんですかーもう!」
そうだよね。そう思うのが普通だよね。
っていうか…
付き合うっていう定義ってなんだ?
むしろ「付き合う」って何?
そんな事を考えていると今度は私の顔が曇ってしまった。
「ふみさん?大丈夫です?」
「うーん…」
「やっぱり…何かありました…?」
やっぱりかぁ…
そうだよね。隣の課のともみ先輩が気づいたのに、同じ課のくみちゃんが気づかないはずない。
「あのね…実は…」
くみちゃんにも、ミーティングルームでの出来事やさやかやともみ先輩と話した事を話し始めた。