初恋を君に
「文…久しぶり。」
戸惑いながらも微笑み
竣一朗は私のテーブルの脇にきた。
「久しぶり…びっくりしたわ。」
そう言うと向かいの席を見て
どうぞと、勧めた。
少し迷いながらも竣一朗は
向かいの席に腰を下ろした。
「僕もびっくりした。元気だった?」
「えぇ。竣一朗も元気そうね。」
席を勧めたのはいいが
話すことなどなく気まずい空気が流れる。
「…このお店よく来るの?」
とりあえず思い浮かんだ質問をしてみる。
「あぁ。ここはカウンターにいる彼女…瑠璃の店で、彼女とは幼馴染みなんだ。だから土日はよく来るかな…」
あの感じのいい店員さんが店長さんなのか。
幼馴染み…
それだけじゃないような気もするけど…
お子さんもいるし、複雑なのだろう。
まさか不倫とか…
いや竣一朗に限ってそれはないと思うけど…
そんな事を考えていると何かを察したのか、事情を話してくれた。
「…瑠璃は1年前に旦那さんを事故で亡くしたんだ。それで拓人と土日にたまに遊んでやってるんだ。」
「そう…。彼女すごく感じがいいわね。可愛いし…」
なんだか凄く意地悪な言い様だった気がして、急いで次の言葉を探したが…
思い浮かばない。
「ごめん。変な意味で言ったつもりじゃないの。本当にそう思っただけだから…」
「わかってるよ。大丈夫。文はそんな事を軽く言う人じゃない事くらい知ってる。それに可愛い女の子や綺麗な女性に熱視線を送るのは僕より君の方が多かったし…」
竣一朗が少し可笑しそうに笑うのをみて、こちらも笑ってしまった。
なんだか急に昔に戻った気がした。
「そうよ。昔っから可愛い子や綺麗な子には目がないのよ。」
「そうか。じゃあ、ライバルだな。」
あまりにもサラッと言うので、
聞き逃してしまいそうになった。
ライバル…
あぁやっぱり、そうなのか。
自分でもびっくりするほど、
冷静で別段ショックも受けず
ただただ納得してしまった。
「手強いわよ。私は…」
そう言うと、お互い吹き出してしまった。
なんだ、もうこんなに普通なんだ。
それはきっともうこの人に恋愛的な気持ちがなくて、上条が大切だからなんだと改めて実感した。