初恋を君に
「なら…その時計をしていたら不味いんじゃないの?」
ふと竣一朗の手首にある腕時計へ
目線を向ける。
私が付き合っていた時に、
プレゼントしたものだった。
「これは、いいんだ。文が僕を思ってプレゼントしてくれたものだし物には罪がないよ。それに。」
「それに?」
「文は幸せになって欲しい大切な人だから。…ごめん。自分から別れを告げたくせに…自分勝手だね。」
本当に自分勝手だ。
でも竣一朗は綺麗な言葉で相手を騙すような人間ではない。
きっと本心なんだろう。
「竣一朗…ありがとう。今、いい恋愛してるのね。」
「そんなことないよ。最大のライバルが亡くなった旦那さんだからね。かなり手ごわいよ。」
竣一朗は、少し寂しそうな顔をして
カウンターを見た。
瑠璃さんは拓人くんの話をニコニコしながら一生懸命聞いていた。
「今更こんな事言うのも、なんだか違うけど…本当は文にプロポーズしようと思ってた。本当に幸せにしたいって思ってた。…瑠璃の事は、ずっと好きで…向こうが結婚してからも、しばらく諦め切れなかったんだ。でも拓人が生まれて旦那と瑠璃と拓人が3人で一緒にいるのを見てさっ…適わないなって…そこでやっと諦めついた。その後、出会ったのが文だったんだ。」
腕時計を見ながら、
ポツポツと話をする竣一朗。
「今年の夏に実家に帰ったら、たまたま瑠璃が拓人と家に来ていて…そこで初めて旦那さんが亡くなった事を知ったんだ。」
「それで…思いが再燃した?」
「簡単に言ってしまえばそう言うこと。…だから文は何も悪くない。僕のせいだ。でも幸せになって欲しいから、時計を外したくない。大事にしたいんだ。」
あぁ…そうだ。
この人はそうゆう人であった。
律儀で変に真面目で嘘をつけない。
きっと簡単ではなかったのだろう。
自分の思いを整理することに…
「ありがとう。でもやっぱりいい恋愛してるんだよ。すごくいい顔してる。」
「それを言うなら文だって。いい顔してるよ。あのイケメンの彼とは上手くいってるんだろ?」
飲もうとしたカフェラテを
思わず吹き出しそうになる。
「…えっ!?彼って?」
「ほら、ここって駅から文の家までの通り道だろ?たまに一緒に歩いてるの見かけて。」
うっ…確かに…
土日たまにいるのなら、見かけていても
おかしくはないが…
かなり気はずかしい。