初恋を君に
「そっか…」
「彼といる文の顔見た時、やっぱりお互いなんか無理してたんだなぁ〜って。すごくリラックスしていい顔してた。僕といた時はあんな顔させてあげられてなかったなって思ったよ。」
別に、リラックスしてなかったわけじゃない。
でも、どこかで無理していたことは
否定出来ない。
「無理してたかぁ…そうかもね。相手にじゃなくて自分にしてたのかも。本当の気持ちに気づかないふりしてた。気づいても叶えることが出来ないと思っていたから…」
言葉にしてようやく実感した。
本当はずっと上条に恋をしていたのだ。
ただ…叶わないと信じていたから、
その恋心に気づかないふりをしていたのだ。
「でもきっと何もなければ上手くいってたよ。腹に一物かかえた同士で。」
「なにそれ?」
思わず笑ってしまう。
確かにお互い本心を隠していた。
「だからさ…幸せになって欲しいんだよ。この時計を見て祈ってる。」
真面目な顔をして竣一朗はこちらを見ていた。この人はこんなにもきちんと私の事を考えていてくれたことが嬉しかった。それはもう恋や愛というものではなくなってしまったけれど…
「ありがとう。申し訳ないとは思ったけど…貰った物とか、プレゼントは処分してしまったの。だけど!ドレスウォッチだけは手元にあるから。大事にさせてもらう!!」
今度は竣一朗が笑い出した。
どうやらツボに入ってしまったようで、
なかなか笑いは止まらなかった。
「ちょっ…ちょっと…竣一朗?」
「あぁ…ごめん。でも…処分したって…。それがあまりにも文らしくて。アハハっ。」
「何よ…そんなに笑うなんて。」
「…でも時計だけは手元にあって良かった。選ぶ時、物凄く悩んだけど、その分気持ちも篭ってるから。大事にして。」
わかったと頷くと、
ポロッと涙がこぼれた。
自分でも驚いてしまい、動きが止まってしまう。
驚いたのは竣一朗も同じだったようで、
小さく、文?と呟いただけだった。
「しゅんちゃん!おんなのこ、なかしたらだめ!!」
近い場所からそんな声が聞こえ、
今度はそちらに驚いてしまった。
声する方を見ると、拓人くんが通路挟んだすぐ隣の席に立ちこちらを見ていた。
心配そうに見上げ、その目は今にも泣き出しそうだ。