初恋を君に


「…拓人くん?」


「おねーさん。なかないで。かなしいの?」


拓人くんは、私の隣にきて
パーカーの袖をぎゅっと握った。
こちらをじっと見つめている
拓人くんの頭を優しくなでる。


「ありがとう。でも悲しいんじゃないわ。大丈夫よ。」


「ほんとう?」


「本当!」


そう言うと、拓人くんはニッコリ笑った。


「拓人。こっちおいで。クッキー食べよう。」


「うん!!」


竣一朗に呼ばれ嬉しそうに、膝の上に
座ってクッキーを頬張り始めた。


「おねーさん。なんでないちゃったの?しゅんちゃんにいじわるされた?」


「こら!?」


「あはは。されてないわ。竣一朗が優しくて嬉しくて泣いちゃったの。」


そう言うと拓人くんは不思議そうな顔でこちらを見るので、
大きくなったら分かるよ。と伝えると…
うん!と大きく頷いた。


「竣一朗ありがとうね。」


「…何にもしてないよ。」


ここで会ったのは、偶然だったけれど
竣一朗の気持ちを聞けて本当に嬉しかった。同時に自分の気持ちにも確信がもてた。


「…でもお礼が言いたいの。ありがとう。私、次に進めそう!」


「そっか…なら、どういたしまして。」


お互い笑顔を交わすと、
色々な思い出が蘇ってきた。
でもそれはもう過去のもので、
今日しっかり決別が出来た。

ずっとあったモヤモヤした気持ちは、
竣一朗と話したおかげで
綺麗に晴れ渡った。

あぁ…早く、上条に会いたい。
会ってきちんと伝えよう。
そして上条の気持ちもしっかり聞いてみよう。

そう思ったら、
居てもたってもいられない気持ちに
なってきてしまった。


「私そろそろ帰るわ。」


「そっか。会えてよかった。嫌じゃなかったら、またこの店来てくれよ。」


「大丈夫よ。お気に入りなの。このお店。それに竣一朗のお店じゃないでしょ?」


確かに…と竣一朗は笑う。
拓人くんもアハハッと声を出して笑っていた。

席を立ち、
お会計をするためにカウンターに向かうと瑠璃さんがこちらを見て微笑んだ。


「ありがとうございました。クッキーいかがでした?」


「ご馳走様です。美味しかったですよ。早くメニューに入れて欲しいです。」


支払いをしながらそう伝えると、
瑠璃さんは嬉しそうに頷いた。
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