初恋を君に
「あなたが噂の文さんだったんですね。想像していたとおりの綺麗な人ですね。」
「えっ?」
お釣りを受取りながら驚いて瑠璃さんを見る。
「竣ちゃんから文さんのこと聞いてたんです。あっ!この話は是非2人きりの時に。お話聞いてる時から憧れてたんです。文さんに…だから会えて光栄。」
そう言って扉を開けてくれた。
パタパタと拓人くんが走ってこちらへ来た。どうやらお見送りをしてくれるようだ。
「今度は是非カウンターに座ってくださいね。」
「えっ…あっはい。では近いうちにまた来ますね。」
是非!と嬉しそうに頷く瑠璃さんと、
バイバーイと大きく手を振る拓人くん、
そしていつの間にか瑠璃さんの隣にいた竣一朗がじゃあ。と小さく手を挙げていた。3人に見送られお店を後にした。
あぁ、あの3人が本当の家族になればいいなぁ…
心の底からそう思えた。
外に出るともうあたりは暗くなり始めていた。
冬の夜は来るのが早い。
カフェでゆっくりしすぎたなぁと思いながら、少し急ぎ足で家に向かう。
スマホを確認すると、
メールも電話もまだ来ていなかった。
よかった…
とりあえず急いで帰って、
出掛けられる用意をしておこう。
何を着ていこうか?
そんなことを考えながら、
マンションのエントランスに入り
エレベーターに乗り込む。
服は?靴は?
そんなことを考えながら
歩いていたので部屋の前に人がいることに声をかけられるまで全く気づかなかった。
「…おかえり。」
「っひゃ…えっ?かっ…上条?」
扉から少し離れたところで、
座っていた上条が立ち上がりこちらに
歩いてきた。
なんだか顔色が悪い。
「どうしたの?連絡くれれば良かったのに…」
「…あぁ。」
唇の色が少し白っぽい。
まさか…長い間外で待っててくれたのだろうか?
急いで鍵を開けて中に入る。
暖房やホットカーペットをつけて、
コーヒーを入れる準備をし始めようとしたがなかなか上条が入って来る気配がない。
「上条?そんなところに立ってないで。中においでよ。鍵締めてね。」
「…入っていいのか?」
今更、何を言っているのだろう。
この間まで普通に私の部屋で過ごしていたではないか…
「そんな真っ白な顔してるんだから、中に入って早く暖まらなきゃ風邪ひくよ。」
そう言うとやっと、
部屋の中に入って来た。