初恋を君に

上条は、寒いのかコートも脱がずに、
ソファに腰をかけた。
何か考えているのか、
ついていないテレビを見つめていた。

ローテーブルにコーヒーをおき
隣りに座る。


「ねぇ…どうしたの?」


話があると連絡したのは私だったが、
この状況に戸惑いを隠せずにいた。
そっと手に触れると、
思った以上に冷たかった。
上条が手を優しく握ると、
冷たさがより伝わってきた。
一体いつから待っていてくれたのだろう。


「文…話って?」


「…えっ?うん…」


急に本題に入ったので、
思わず口ごもってしまう。
何から話せばいいのだろう。
そんなことを考えていると
上条から話し始めた。


「…話って元彼とヨリを戻したってことだろ?」


「…えっ?」


あまりにも意外な言葉に驚いて否定できずに固まってしまった。
それを肯定と捉えた上条が話し続ける。


「…初恋って本当に実らないんだな。最後のチャンスだと思ったのに。5年も片思いして馬鹿みたいだ…」


「えっ?」


初恋?
最後のチャンス??
…5年も片思い???
それって…?


「…上条って…私の事、好きなの?」


自分の頭で考えていたことが、
耳から聞こえてきて口に出した事に気付き、恥ずかしさのあまり俯く。

うわぁ…
これじゃ自意識過剰な人だわ…

しかし上条から返ってきた言葉は
それ以上だった。


「…好きなんて言葉じゃ足りない。俺にとって文は初恋で恐らく最後の人だ。これ以上愛せるひとに出会えないと思う…」


その言葉を頭で理解したと同時に、
言葉ではなく先に体が動いてしまった。
上条に抱きつき、顔を埋める。


「…嬉しい!」


「えっ!?」


上条は硬直したまま何も言わないので
少しだけ体を離し、顔を見ながら言葉を続けた。


「私も!同じ気持ち。」


「…はっ?ヨリを戻すんじゃ…」


「誰がそんなこと言った?」


上条の顔を見ると困惑しながらこちらを見つめていた。


「…だって!だって…会ってたじゃないか!カフェで楽しそうだった。それに、あの時計も大事にとってある。だから…」


切なそうな顔をする上条が、
あまりにも愛おしくて思わず自分から
キスをしてしまった。

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