初恋を君に
先に出るわけにもいかず
上条の行動を見ている訳にもいかず
仕方なく壁を見つめていた。
念のためと、
乳白色のバスボムを入れておいて
正解だったようだ。
「俺も入れて。」
「あっ…うん。」
伸ばしていた足を縮め場所をあける。
そこへ上条がゆっくり入ってきた。
「よいしょ。」
「上条。ちょっと、それおじいちゃんみたいよ。」
上条の掛け声が可笑しくて、笑っているとお湯をパシャリと掛けられた。
「…なにするのよ。」
「ついつい、出ちゃうんだよ。よいしょーとかよっこらしょとか…それに上条って呼ぶなよー」
「ごめんー。でもずっと呼んでたから、なかなか…」
「そのうち、文も上条になるんだからな!」
上条の言葉が上手く理解できず、
思わず顔を凝視する。
「…えっ?」
「やっと、こっち見た。そう言うこと。本当は正月に文の実家に挨拶とか行きたかったんだけど、それじゃ余りにも焦りすぎだって丈たちに言われたからさぁ…」
「丈たち?ってことは、さやかも?」
湯船に手をかけ気持ちよさそうにお湯に浸かりながら、大きく頷いた。
「あいつなんか、本当〜目ざといというか…敏感と言うか…かなり昔から気づかれてたし。まぁ丈は鈍感だから話すまで気づかなかったけど。2人には、ずっと相談に乗って貰ってたなぁ。ご両親に年末に挨拶行くつもりだ!って言ったら今田にすごい止められた。」
「うん。まぁ…今日までこんなに本気だとは思ってもみなかったから…」
まじかぁ〜と大きくため息をついて
大袈裟に落ち込んだ後、
今度は真剣な目でこちらを覗きこむ。
「なぁ…文がやっと俺の方見てくれて、想ってくれて…どんな嬉しいか。言葉には出来ないくらいだ。わかる?」
微かに頷くと、
お湯の中でぎゅっと手を握られた。
「今までこんな気持ち、文以外に持ったことない。文はずっと特別だった。大事な大事な俺の女の子だ。だからずっと一緒にいて欲しい。」
「…わかった。」
返事と同時にガバッと抱きつかれた。
お風呂のせいなのか、お互いの身体は
火照っていて触れたところは心地よい熱を放っていた。
「離したくないけど…ちょっとのぼせてきた…」
「っばか!早く上がりなさい!!」
そう言うと唇に軽いキスを落として、
ザバッと立ち上がり湯船を出て行った。
「お先に上がるわ。文は?」
「私は…もう少し。」
わかった〜と手をヒラヒラさせながら、
上条…もとい、達哉はお風呂場を出て行った。
お風呂場を出ていくのを見送ると、
湯船の中でグーッと身体を伸ばした。
展開があまりにも早くて、
頭が追いついていかない。
顔にお湯をパシャパシャとかけて、
軽く頬を叩く。
『文も上条になるんだからな。』
達哉のことばが頭を駆け巡る。
それって…
そうゆう事だよね…
結婚の文字がチラつく。
「ふぅ〜。」
大きく息を吐いて、湯船から上がる。
リビングに戻るとドライヤーを持った
達哉がソファで待ち構えていた。
「ほら、座って。乾かしてやる。」
「…はいはい。」
しぶしぶ上条の前に座ると、
タオルでワシャワシャと髪の毛を
揉みくちゃにされた。
「ちょっと〜!!」
「しっかりタオルで水分を取ると早く乾くんだよ。早く寝たいんだろ。」
確かに早くベッドに潜り込みたい。
なので大人しくされるがままに身を任せた。
達哉はブラシで梳かした後、
ドライヤーの温かい風をあて始めた。
温かくて気持ちいい…
どんどん瞼が重くなり、
眠気が一気に襲ってきた。