初恋を君に


…よく寝た。


目が覚めるといつもと同じ天井があったが、腰のあたりに重みを感じた。
寝ぼけながらその重みの原因を探るために、手を伸ばすと自分以外の腕の触れた。

その感触に驚き一気に目が覚めた。
上条が…達哉がいるんだった。

そして昨日、お互いの想いが通じて、
同期から恋人になったのだ。

今更ながら実感して、
なんだかとても恥ずかしくなり
思わず顔を枕に埋め、足を小さくバタバタさせた。


「ひゃっ…」


「朝からな〜に暴れてるの?」


抱きすくめられ、耳元で囁かれた。
思わず心拍数が上がる。
アラサーなのに、こんな事で簡単に
ドキドキしてしまう。


「あぁ〜文がいる。」


「なにそれ?だって私の部屋よ。」


達哉の方に身体を向き直り
見上げるように顔をみると
達哉は、額が触れるほど近づき
少しだけ寂しそうな目でこちらを見た。


「文に1ヶ月近く、触れてなかったし会ってなかった。ってか会ってくれなかった!」


「…それは。だってそれは、私と達哉の関係がよくわからなかったから…」


「…今は?もうわかる?」


そう聞かれ小さく頷くと、
ギュッと抱きしめられた。


「あ〜!俺、自分がこんなにせっかちで馬鹿なヤツだと思わなかった〜。」


「アハハ。何それ?」


「…1番最初に文を抱いた日に気持ちは伝わって恋人同士になったもんだと思ってた。だから…佐山と飯に行くって聞いて意味がわからなかった。俺はこんなに真剣なのに文は違うのかと…腹が立った。」


「…私に?」


「最初は…でもその後、自分に。」


抱きしめられた腕が緩んだので、
少しだけ身体を離し達哉の顔を
じっと見るとまるで好きな女の子に
どう接すれば良いかわからない少年のような顔をしていた。


「こんなに誰かを想ったことが本当に初めてだったんだよ。彼女になって欲しいとか…ずっと一緒にいたいとか…こんな気持ち、無縁だと思ってたから。」


「…本当に?」


達哉は返事の代わりに、
目の上にキスを落とした。


「どうすればいいかわからなかった。まさか自分がこんなに焦ったり、余裕をなくしたりするなんて…その度に丈と今田に話したり、愚痴ったり…高校生の時に経験することだって言われたよ〜。」


「確かに。」


「あぁー恋愛なんて死ぬほど面倒臭いと思ってたのに〜」


嘆く達哉が可笑しくて
思わずクスクスと笑ったら
笑うなっと軽くほっぺたをつねられた。
軽く睨むと今度は達哉が可笑しそうに
笑い出した。

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