初恋を君に

考えなきゃいけないことは、
多々あるけれど今はとりあえず仕事だ。

午後の業務を集中してこなしていると、
時間はあっという間に定時直前だった。
とりあえず目処をつけてデスクを片付け始める。

今日中に送らなきゃいけないメールを
思い出してタイピングをしていると
目の前の内線が鳴った。


「お疲れ様です。総務 菊池です。」


「文?お疲れ様。」


内線の相手は達哉だった。
肩と顔の間に受話器を挟み、
メールのタイピングを続ける。

こんな時間になんだろう?
明日ミーティングでも入ったのかしら?


「お疲れ様。どうしたの?」


「うん。今日の夜電話するから〜」


「…えっ?」


思いもよらぬ内容だったので手が止まった。

…電話?
今してるじゃん。
ってそう言うことじゃないか…


「なっなんで!内線で…」


「いや〜言っとかないと、気づかないかもしれないし。メール見るかも最近の文は疑わしいから〜」


確かに…
否定はできないが、流石に恋人がいれば
話は違うけど…

そんなことを考えると、
なんだか顔が熱くなる。


「文?」


「…わかった。電話ね。ちゃんと出るから!」


「じゃあ、また後でな。」


そう言うと、受話器の向こう側で
静かに内線がきれた。

作りかけのメールを最後まで打ち込み、
内容に不備がないか確認する。

なんだか、フワフワしている気がしてならないので2、3回見直す。

うん。大丈夫そう…

送信ボタンを押して、送信されるのを見送り
パソコンをシャットダウンして
デスクに上を片付けて席を離れた。

そういえば、夜って何時よ…

スマホに電話がくるので手元にあれば
問題ないはずなのに、なぜか急いでしまう。

夕食は、家にあるもので平気。
帰ったらとりあえず…

そんなことを考えていると、
なんだか学生時代に戻ったみたいだ。

誰かの電話をドキドキしながら待ったり、
ヤキモキしたり、楽しみにしていたり…

思わずニヤニヤしてしまうが
電車の中だと気付いて、軽く咳払いをして
なんとか真顔に戻した。




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