初恋を君に
『…おい。そうゆう事 不意打ちで言うなよ。』
「えっ?」
『いや…とりあえず明日迎えに行く。今日よりは早く帰れるから。』
「はいはい。」
どうやら家に着いたのか、ガサガサとビニール袋を置く音が聞こえた。
荷物と鞄を持って、電話なんて結構大変だったんじゃ…
ー早く声が聞きたかった。
先ほどの言葉を思い出してまた恥ずかしくなってしまい、
近くにあったクッションを引き寄せ顔を沈めた。
『あっ!!文、明日 寝間着は貸してやるから安心しろ。』
「へっ?…あ、うん。ありがと。」
『…まぁ、寝られればの話だけどな〜』
なんのことだか判らずに、答えに困っていると
電話の向こうから少し意地悪そうな、それでいて何とも甘い声が聞こえた。
『あんまり誘惑するなよ。』
「なっ!!!何をかん…考えてっ…ばっばかじゃないの!?」
恥ずかしさとなんとも言えぬ悔しさで
思わずクッションをボスボスと叩いてしまう。
「…そんなに言うなら、しっかり誘惑してやるわよ!!覚悟してなさい。」
『ふ〜ん…』
しまった…売り言葉に買い言葉。
もしかして、上手くのせられたというよりも
乗ってしまった…完全に…
『じゃあ、覚悟が必要なくらい誘惑してもらおうじゃないか。文?』
「イヤイヤ…上条さんに誘惑?…なんてね?恐れ多い。言葉のアヤってヤツですよー」
しどろもどろになりながら、前言撤回を試したが
こんな言い訳で通用する相手ではなく…
『ふーん。言葉のアヤねぇ?でも俺ん中じゃ言質とったからねー。菊池さん気をつけなきゃね〜。
あ〜明日楽しみ。よろしくね。菊池さーん。』
「…善処します」
今度はなんとも言えない敗北感に覆われて
クッションに顔を埋めた。
『とりあえず、明日行くから!』
「はいはい。わかりました。」
『いじけるなって。じゃあな。おやすみ。』
「はーい。おやすみなさい。また明日。」
そう伝えると耳からスマホを離し、静かにテーブルに置いた。
ディスプレイの通話終了の文字を確認して電話を切る。
…あぁー馬鹿な事言ってしまった。
後悔先に立たずとはこの事。
明日どうしよう…いやいや!いつも通りでしょ!!
とりあえず…早くお風呂に入って、寝てしまおう。
うん…それがいい。