初恋を君に
運んで貰ってお茶も出さずに帰すのは、さすがに失礼だろう。
「荷物を運んで貰ったしお茶ぐらい飲んでけば?」
「…俺、一応男だけど?」
何を言い出すんだか、そんなのもちろん知っている。思わず吹き出した。
「知ってるよ。男だけど同期で友達じゃん。あんまり綺麗じゃないけどどうぞ。」
一瞬不満そうな顔したのは気のせいだろうか?上条は「それじゃあ遠慮なく」と
私のあとからドアをくぐった。
恋人がいるのに家に入っていいものかと考えたのかもしれない。いやいや、上条という男がそこを気にするとは思えないので、気にしないことにしよう。
だって上条は後腐れがなければ、彼氏持ちでも気にしない。自分から手は出さないが向こうから来れば拒まない。
だからこそ『男としては最低最悪』なのだ。
見た目には、そうは見えないだから余計にタチが悪い。
「ソファに座ってて。コーヒーでいい?インスタントだけど。」
「ありがとう。」
同期だしマグカップでいいかな?
さやかが泊まりに来ると出してあげるマグカップにコーヒーを注ぎ上条の前に置いた。
「はい。どうぞ。」
「おう。っていうかなんでカーテンないの?」
窓にはレースのカーテンがかかっているだけだ。古いものはゴミ袋の中だし、新しいものはまだ紙袋だ。
「今日買う予定だったから昨日はずしちゃった。」
「気が早いなぁ」
「だよね。今日の朝眩しくて目が覚めたよ〜。」
上条は「バカだなぁ」と可笑しそうに笑っている。
「つけないの?カーテン。」
「上条が帰ったらやろうかと…」
「文。俺に早く帰れって遠回しに言ってるのかよ〜。ひどいヤツだなぁ」
「そういうわけじゃないけど…」
同期と言えどお客さんの前でバタバタとかけたり入れ替えたりするのは失礼かと思っただけだ。