初恋を君に

「文。お待たせ。」

そう言って肩を抱き寄せた。
いやいや近いから…

私は何も言えずに、上条を見上げているとニッコリ笑ったあと
「佐山お疲れ。何してるの?」

口調は優しいが何だか目が怖い。
佐山と、呼ばれた彼も何か感じたようで
「上条主任…!?いや。たまたま会ったんでお話してたんですよ。じゃあ俺帰ります。お疲れ様です。」

そう言ってそそくさと歩き出した。

お疲れ様。と声をかけると
小さくお辞儀をして去って行った。


「文。佐山と知り合いなの?」


っていうか…手を肩から離してくれないかな?


「なんで?」


佐山くんって名前聞き覚えあるような…


「いや…仲良く話してたから。」


そう言って、手を離し改札に向かって
歩き出した。
後から付いていきながら、
知り合いではないことを告げると
「そっか。」と少しホッとしたように呟いた。


「待って。どこにいくの?」


「とりあえず電車に乗って隣の駅。」


はいはい。りょーかいしました。


隣の駅で降りて上条は迷わずに歩いていく。大通りから路地に入っていく。


「ここに入るぞ。」


そう言ってヨーロッパの田舎にありそうな一軒家に入っていく。

建物は、オシャレで可愛い女の子が
好きそうな佇まいだ。


「文。こっち。」


上条は既に扉を入っていて、
こちらを見ていた。


「あっごめん…」


急ぎ足で扉を入ろうとしたが、休みにしか着ないタイトスカートのせいで
扉の段差で少しつまづきそうになった。


あっと思った瞬間に、
上条に腕をグッと引かれ
何とかつまずかずにすんだ。


「あっありがと…」


上条は掴んだ腕を外すどころか、
そのまま引き寄せ腰に手をまわした。


「ちょっ…」


「今日はお詫びだろ。」


耳元で囁かれる。
本当にこの男はっ!

文句のひとつでも言ってやろうと思ったら「ご予約の上条様ご案内します。」
とスタッフに声をかけられた。


上条は腰に手を回したまま、
スタッフの後をついて行く。
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