初恋を君に


「ふみ〜そんな怒るなよ〜」


「別に怒ってない…」


メニューを見ながら答えた。
怒ってはいないが困惑はしている。

その理由は案内をしてくれたスタッフの男性に上条が言った一言だ。


「俺の彼女が綺麗で美人だからって見過ぎですよ。」


そう言い放ったのだ。
そのスタッフは照れながら目線を外し
「お綺麗なのでつい…」と言いメニューを簡単に説明してその場を去っていったが、その間私は恥ずかしすぎて赤面してしまった。


メニュー越しに上条を軽く睨んでいると
「決まった?」と優しく声をかけてくる。


きっとこれが上条の通常運転なんだろうなぁ…と1人納得して頷いた。


はじめの方こそ、
気恥ずかしさがあったが
そこやはり同期同士すぐに
いつも通りに会話が弾む。


食事はほぼ終わり、
食後のコーヒーが運ばれてきた。


「すごく美味しかったよ。お腹いっぱい。」


「俺も初めて来たけどすごくいい感じだし、また来ようぜ。」


「そうだね。今度は4人で…」


「2人でも来ようよ。」


にっこり笑いながら少しだけ優しい声で
上条が言った。
その声や表情になんだかドキドキしてしまう自分がいた。


答えを濁し、ちょっとお化粧室に…
と言って席を立った。


なんだか本当に調子が狂う。
最近の上条は、なんか変だ。


お化粧室で簡単にメイクを直し
席に戻ると上条が自分の荷物と
私のジャケットを持って
カウンター越しにシェフと話をしていた。

シェフに軽く会釈をして
上条の元へ近寄ると
「本当に綺麗な彼女だな。また来いよ。彼女さんもありがとうね。」
と声をかけられた。


だから違うんだってば…と思いながら
否定するのも面倒なので
「美味しかったです。ご馳走様でした。」と告げた。


そのまま上条が外へ歩き出したので
私も歩き出した。


ってあれ?お会計は??


「ちょっと上条っ!」


焦って上条のスーツを引っ張る。
私がジャケットを受け取ろうとしたのかと勘違いして渡してきた。
確かに受取りたかったけどって違うし。


「なんでお会計しちゃったの??」


「えー?ご馳走したいと思ったから?」


「いやいや。話違うから!」


「まっいいじゃん。」


そう言いながら時計を見て、
「急げば電車乗れるぞっ」と
急ぎ足で駅に歩き始めた。



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