初恋を君に


「いや、大丈夫だし。」


「まぁいいじゃん。ほらっ電車乗るぞ」


駅でお互い別の路線になるので
そこで別れるのかと思いきや、
上条は私を家まで送ると聞かない。


金曜日の夜の電車は混んでいる。


…またこの距離感。
まぁ混んでるし、しょうがないよね。
そう思いながらドキドキしてしまう。

おかしいなぁ…私この間、
恋人と別れたばかりなのに。

2つ先で電車を降りる。
たくさんの人が降りるため、
上条とはぐれそうになったが
ぐっと手を掴まれ引き寄せられる。


「終電だから人が多いのか?」


「いや…もともと乗り降りが多いのよ。この駅は…」



手をつないだまま上条が歩き出した。
手を抜こうとしたら逆に
ぎゅっと握られてしまい離せない。


もう、本当に勘弁して…
勘違いしてしまいそうになる…
でも相手は上条だ。
これはきっといつもの事なのだろう…
そう考え気持ちを沈める。


「今日はコンビニは?」


「えっ?あぁ…大丈夫。」


あぁ…もうすぐ着いてしまう。

ってなんでがっかりしてるんだ!
頭をふるふると振り今の考えを、
振り払った。


「ここまででいいよ。ありがとう。」


「扉まで送る。」


そう言うと、エントランスに入っていく。すぐエレベーターが来て乗り込む。


「…何かあった?」


もしかして、何か悩んでて聞いてもらいたいのかしら?

上条がじっとこちらを見た後、
ひとつため息をついた。


「…今は言えないかな。」


「そう。いつでも相談にのるから。」


会話をしているうちに扉の前に着いた。


「ありがとう。気を付けて帰ってね。」


「あぁ…おやすみ。」


扉を開けて中に入り、
隙間から上条に「じゃあね。」と
笑いかける。


それは一瞬の事だった。
あともう少しで扉がしまる瞬間、
ガッと扉が開いた。

扉を開けたのは、もちろん上条だった。
驚いて1、2歩後ろに下がると、
その隙間に上条が入って来て
後ろ手で扉を閉めた。

びっくりして固まっていると、
グッと体を引き寄せられて
思わず顔を上げ上条を見ると
今まで見た事のない切ない顔をしている。

どうしたの?と言い終わる前に、
目の前が暗くなる。


えっ?なに?


感じるのは唇に柔らかい感触。
1度、離れたがすぐさま
角度を変えて唇が重なり深くなる。

あっ…やばい…
一瞬、流れに飲まれそうになったが
思い直して上条の胸を叩く。

ゆっくり上条が唇を離すと
今度はぎゅっと抱きしめられてしまった。

「かみじょ…」


「ごめん。鍵ちゃんと閉めろよ。」


そう言いながらパッと体を離し
扉を開け上条は帰っていった。


なんとか鍵を閉めたがその場に
崩れ落ちてしまった。


なんで?
なに?なんで?


私、今…
上条とキスしちゃったの…?


事実を正確に受け止めた私の顔は
熱くなり、頭は呆然としていた。


どっどうしよう…!?
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