初恋を君に


少しだけ息を切らして電車に乗り込む。

急いでいたわけではないが、
足早で駅まで来てしまった。

息を整えながら先ほどの光景を
思い返す。


うーん…
どう考えてもあの2人は恋人同士しか
見えなかった。


百合子さんの
上条を本気で落とそうとしている
という噂は本当で、
上条は落ちちゃったのね。
そうじゃなきゃ、同じ課の人と
どうこうなるなんて有り得ない。


なるほど…

うーん…
じゃあなんで、あんなことしたの?
やはり『上条』だからなのか?


そんな事を考えながら
家につき鍵を開けると、
この間の出来事がフラッシュバックして
思わず顔が赤くなる。

上条の少し余裕のない顔。
触れた唇の感触。


うわっ…勘弁してっ
あぁ…本当に…
上条の事、深く考える前でよかった。


今まで上条との間に起きた出来事は、
全てなかった事にしてしまおう。

今まで通りの同期に戻ればすむ話。
ただそれだけだ。

家に入ってほっとひと息着くと、
メールの着信音が聞こえた。


『文。お疲れ。店でなんで声かけてくれないんだよ〜冷たいヤツだなぁ〜』


上条からのメールだった。
いやいや。
彼女と楽しそうにしているところに
行けないでしょうよ。


メールの返事をする気になれず、
そのままスマホをポーンと
ベッドに投げてしまった。

疑問符もついてないし、
いいや、いいや。
そのままバスルームに向った。




寝る前に充電をしておこうと、
スマホを繋げると着信があった事に
気づいた。確認すると、上条だった。


もう。なんなのよ。
気を使って声をかけなかっただけなのに…
悪いけど無視させてもらいます!


明日も仕事だし寝よう寝よう。
彼女持ちの男なんて構ってられない。


モヤモヤした気持ちを抱いたまま、
ベッドに入る。


上条の事は頭から追い出して、
くみちゃんの好きな相手の事を考えていた。

あれは…多分…
社内の人だと思うんだよなぁ…

でもまぁ
そのうち話してくれるでしょう。
くみちゃんは上手くいってくれると
いいなぁ…


そんな事を考えていると、
あっという間に眠りについてしまった。



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