初恋を君に
「…ちょっと、くるし…」
トントンと上条を叩く。
少しだけ力が緩むが離してはくれない。
「佐山が文のこと狙ってるらしいって聞いてたから、さっき佐山がここから出てきた時、すげぇー焦った。文がここにいるって聞いてたから。」
「へっ?誰から?」
「冨田さんが教えてくれたよ。両方とも。」
両方とも?
ここにいる事も?佐山くんの事も?
なんか引っかかる…
「さて俺も戻らないと。文も、もう戻る?」
「…戻るから離して。」
やっと体を離してくれた上条は、
入ってきた時とは別人のように
にこやかだった。
って言うか…
この人、百合子さんって言う彼女がいるんじゃないの?
その事が頭をよぎりだんだん怒りに変わる。
私、遊ばれてるってこと??
冗談じゃない!!
少し量のある資料を持とうとした時、
途中まで持つよ。と上条が手を伸ばしたが手で制す。
「いい。自分で持てる。それに…」
軽く上条を睨みつけ言い放つ。
「彼女が社内にいるのに、いくらなんでも節度がなさ過ぎる。同期だとしても遊びでこう言うことするのは神経疑う。」
資料をしっかり抱え
資料室を小走りで出ると
そのまま3階まで階段を駆け下りた。
すぐに席には戻らず1度トイレに寄った。鏡を覗くとグロスがとれて唇からはみ出していた。
それが資料室での情事を思いださせ、
何故か目頭が熱くなる。
あいつっ…
何様なのよ。本当にどうゆう神経してるんだ!?信じられない。
またしても怒りがフツフツと湧き上がる。それを抑えようと、ふぅーと深く息を吐いた。
あぁ…もう。
今夜は家で飲むぞ。
ワインとチーズを買って
くみちゃんに借りたBlu-ray見て
現実を忘れてやる。
そう心に決め、
ヨシっと気合いをいれて
トイレをでて席に着いた。
資料室でコピーした資料を区分事に分け
係長に渡す。
いつもありがとな〜と係長が受け取った。これで会議用の資料は整ったはずだ。
今日、急ぎでやらなきゃいけない業務は
無いので通常業務を進める。
思いのほか集中していたらしく
気づいたら定時だった。
珍しく、くみちゃんがなかなか席から立たない。終わりそう?と声をかけると、
もう少しです〜と返ってきた。