初恋を君に
「はいはい。どちら様?」
開いた扉の先に立っていたのは
上条だった。
「…訪ねておいて、言うのもおかしいけど不用心じゃないか?」
確かに…否めない。
が、開けてしまった以上閉めるわけにもいかない。
「…何か用?」
「玄関先に入っていい?」
「…中入れば、コーヒーぐらいだすよ。鍵締めてね。」
「文…おまえさぁ…」
上条が何か言う声が聞こえたが、
最後まで聞かずにキッチンに向かう。
ティファールのスイッチを入れた時に
鍵が締まる音がした。
随分ゆっくりだな。
すぐ入ってくればいいのに。
「何回か電話したんだけど…」
「えっ?ごめん。鞄に入れっぱなしだったから気づかなかった。」
「飲んでたの?…ってもうボトル一本空きそうじゃん!!」
「別にいいじゃん。明日休みだし…上条には関係ないじゃん。」
って言うか、
金曜の夜に何しにきたの?
百合子さんのところに
行かなくていいわけ?
ちょっとイラッとしながら
コーヒーを渡し上条の隣に座る。
3人がけのソファなので2人の間には
程よい距離があく。
テーブルにあるワイングラスを手に取る。
「…で何?」
「…文さぁ。俺も男なんだよ。わかってる?」
「はぁ?わかってるよ。今更、女だって言われる方が驚くわっ!」
持っていたグラスのワインを飲み干す。グラスをテーブルに置くために少しだけ上条との距離が近くなる。
「…わかってねぇよ。」
いつもよりも低い声に驚いて
思わず上条を見る。
「わかってるなら、そんな格好平気で見せるなよ。」
そう言いながら腕を掴まれ
気づいたらソファに押し倒されていた。
「いつも家でこんな格好してるわけ?」
「えっ…」
今日は現実逃避!と思っていたので
いつものスエットではなく、
さやかとくみちゃんから貰った
可愛い部屋着を着ていたのだ。
確かに男の人の前に気軽に出れる格好かと言われたら、ちょっと考えるべきだった。酔ってたとはいえ、見苦しいものを見せてしまったかもしれない。
「うっ…ごめん。見苦しいよね。」
少し落ち込んだ声でそう答えると
上条が大きくため息つき首元に顔を埋めた。