初恋を君に


「この間も言っただろ。出したいから出してるだけだ。俺の勝手な自己満足なんだから文は気にしなくていいんだって。」


「…じゃあ。ご馳走様。」


よしっ帰ろうと上条は車に乗り込んだ。


「それで何買ったって?」


「これ?日本酒。上条が好きなそうなヤツと自分の分。」


「マジか!帰ったら飲もう!」


嬉しそうに車を発進させる上条。


「…帰ったらって自分の家ってこと?それとも…」


ふと疑問に思った事を口に出して、
上条を見ると意地悪そうな笑みを浮かべていた。


しまった…
この顔はヤバい…


「昨日無理させたし、今日は帰ろうと思ったけど…」


赤信号で車を停めこちらをじっと見る
上条の熱い目線に耐えられず、
思わず俯く。


「けど…お土産も貰ったし、ご褒美あげなきゃなぁ。それに明日はお互い休みだ。」


いやいや。食事をご馳走様してもらってますから!

そう思いつつも声には出せずにいると、
肩をぐっと抱かれ、
朝までよろしく。と耳元で囁かれた。


ぼっと音がしそうなほど顔が熱くなり
困惑する私を見て楽しそうに笑う上条。


うぅ…
これじゃ本当に彼氏彼女みたいだよ。


ふっとそんな事を考えたが、
またすぐに、でも…とネガティブに
考えてしまう。

急に黙って窓の外を見始めてしまっても上条は何も言わなかった。

何も話さなくても、
上条とは苦じゃないし不安にもならない。仲の良い同期だからなのか…
それとも…


あぁ…今日はこればっかりだなぁ…


自分でも心の中で苦笑いしてしまう。


様子を見ると決めたじゃないか。
冷静に…自分の気持ちを見極めたい。


「そうだ。次を右に曲がって。」


「右?」


「スーパー寄りたいの。日本酒のアテと明日の朝ご飯の材料とか買いたい。」


「うん。わかった。」


モヤモヤする気持ちはとりあえず
胸の奥にしまっておこう。






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