初恋を君に
「ほら。乾いたぞ。」
そう言うと、ドライヤー片付け始めた。
いつも適当でこんなに丁寧に乾かさないので指を通すとサラサラだった。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
鮭をグリルに入れてラグとソファに
コロコロをかけてから
ローテーブルにお箸やおひたしなどを並べ始める。
「本当に…いい嫁になるよ。文は…」
「またそれ?」
呆れ顔で上条を見てから
鮭をひっくり返すためにキッチンに向かう。
「文って仕事もソツなくこなすけど、
家事も料理もだなんて…」
「はぁ?そんな事ないわよ。家事も料理も必要に迫られてよ。それに嫌いじゃないし。」
2人分のご飯とお味噌汁を乗せたお盆を上条に渡す。焼き上がった鮭をお皿に乗せ私もローテーブルに向かう。
「さぁ食べましょう。どうぞ。」
「いただきます。」
フローリングの部屋で
まるで旅館の朝ご飯の様な昼ご飯。
ミスマッチでちょっと可笑しくて
思わず笑ってしまった。
「どうした?」
「この部屋とミスマッチなご飯だから。」
「う〜ん。それは否定出来ないなぁ。
じゃあ、今度旅館で一泊するかぁ〜温泉とかあるところで。しっぽり。」
「なんか最後の一言でがっかり…」
「なんだよ〜満更でもないくせに。」
ニヤリと笑い、上条はこちらをみた。
「文の浴衣姿見たいし。それに温泉付きの部屋取れば一緒に入れるし…」
「もうっ。そればっかじゃん。」
「ばーか。男なんてそんなもんだよ。」
うわぁ…最低。
思わず、眉をひそめて上条を見るが
本人は涼しい顔をして
シジミのお味噌汁を飲んでいる。
「雪を見ながら温泉とかちょっと憧れるんだよね。もう少し寒くなったら2人で行こう。」
優しく笑う上条を見て思わず、
うん。と頷いてしまった。
って言うか…この人が
本当にあの『人としては最高。男としては最低。』の上条何だろうか?
実は飲みすぎてた金曜日の夢で起きたら土曜の朝でしたとか?
もしくは同期と寝ちゃったから特別?
それとも…
また堂々巡りの考えをしていると、
ご馳走様。と声が聞こえた。
「あっはい。お粗末さまです。」
「食器の後片付けは俺がやるから、文はゆっくりしてな。」
「えっ?あっうん。ありがと。」
シジミのお味噌汁の残りを飲み干すと
食器を重ね流しに持っていった。