初恋を君に


上条が食器を洗ってくれている間、
洗濯機のスイッチを入れに行く。


日曜の昼下がり。
ゆったり時間が流れる。


「来週は総務も忙しいのか?」


キッチンから上条が話しかけてきた。


「うちはそうでもないわよ。月初の会議は準備さえ終わっちゃえば。上条は?主任以上の参加だから大変ね〜。」



「会議自体はそんなに…それよりもその後だなぁ〜」



「あぁ…恒例の親睦会?」



月初の会議の後には必ず親睦会という名の飲み会が開催される。
社長以下幹部は勿論、主任までの役職者は絶対参加なのだ。


「色んな部署の人と話せるのは楽しいし、勉強になるけどなぁ…社長に捕まると厄介なんだよ。」


「まぁまぁ。頑張って。上条主任!」


食器を洗い終え、
ミネラルウォーターのボトルを2本持って上条は私のすぐ隣りにすわった。


「そういえば前回、染谷課長が文と冨田さんの事、引っ張りたいって総務の課長を口説いてたぞ。」


「えっ…染谷課長、本気だったの?」


「…そんな話出てるのか?」


ミネラルウォーターを飲みながら
首を傾げた。


「移動とかする気ないの?文ならどこでも欲しがるんじゃない?」


「えぇ?移動?考えたこともないや。それに私は総務以外無理だと思うよ。」


「ふーん。」


転職なら考えたことはいくらでもあるけど、移動は考えたことなかったな。
上条はそんな事を考えたことあるのだろうか?そんな話はした事はなかったなぁ…そういえば。


「って言うか…何時頃帰るの?」


「さっさと帰れって?」


上条が少しふてくされた声で答える。


「いや…違うけど。この後、洗濯物とか干したいし…色々、家の事したいから。」


「別に気にしないけど?」


「いや、こっちが気にするから…」


なんだよ〜と不貞腐れる上条を
宥めていると…


「なら2人でやろう。そうすれば早く終わるだろ?」


「えっ?手伝ってくれるの?」


もちろんだ!と立ち上がる。
そこまで言うなら…
手伝って貰おう。


「じゃあシーツとベッドカバー替えてほしい。」


「昨日も沢山濡れちゃったからな〜」


ニヤリと笑う上条を軽く睨み、
クローゼットの左下の引き出しに新しいの入ってるから!と言うとリビングのフローリングの掃除をし始めた。

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