初恋を君に



「文さん。私達そろそろ戻らないと…」



「あっそうだね。じゃあ佐山くんこれで…」


そう言いながら立ち上がる。
実はまだ戻るには早いが
くみちゃんが気をきかせてくれたのだ。



「じゃあ。ご連絡しますね。」



「…うっうん。」



佐山くんと別れてくみちゃんと
エレベーターに乗り込み。



「くみちゃん〜ありがとう。助かった…」


「いえ。さすが佐山さんですね…どうするんですか?」



「うーん…なんとか上手く断る。」



さて、なんて言って断ろうかな…
困ったなぁ…



「彼氏がいるって言えばいいんじゃないんですか?」


「うっ…えっ?」


「だってその通りじゃないですか〜」


思わず額を手で覆う。
そうゆう簡単な話じゃないのよ…

3階につきエレベーターから降りる。
早めに戻って来たのでオフィスには
ほとんど人はいない。


「文さんがはっきりさせない理由はなんですか?」


「えっ?」


「傍から見たらお互い想ってるようにしか見えません。元カレさんとも別れて随分経ちますよ。」


くみちゃんがこちらを真っ直ぐ見ている。自分のズルさを見抜かれて思わず、
目を逸らした。


「そうだね。」


「文さ〜ん。上条さんは文さんの事…」


「くみちゃん!この話は今日はここまで。また今度よ。」


くみちゃんは続きを言いたげだったが
はい。と小さく返事をして自分の席に戻った。


続きは何となく分かっている。
分かっているからズルいのだ。
ズルくて臆病で最低だなぁ…
分かっているけどもう少しこのまま…

はぁ〜っと深く溜息をついた。

仕事しよっ
パソコンを立ち上げて椅子に座り直す。

忙しい月末。
片付けなければいけない仕事は、
沢山あるのだ。


色々と考えてたくなくて仕事に集中する。集中すると時間が経つのはあっという間だ。
気づくと終業時間はもうすぐだった。
目処をつけて帰る支度をする。
くみちゃんをみると、くみちゃんも目処をつけたようだ。お昼の件もあるので声を掛けようとくみちゃんの席に向かう。
しかし席を立った時に内線が鳴った。


くみちゃんと目があったので、『ちょっと待ってて』と声を出さずに口を動かすと頷いてくれたのを見届けて内線を取った。

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