初恋を君に


丁度来たエレベーターに乗り込み、
「閉」のボタンを何度も押す。

上昇し始めたエレベーターの壁に寄りかかり思わずため息をついた。

なによ。なんであんな事を言われなきゃいけないの。
…でも最後のは八つ当たりだな。

更衣室に向かい急いで着替えて、
会社を後にする。
誰にも会わずに駅まで辿り着きそのまま電車に乗り込んだ。
とにかく早く家に帰りたい。

やっと家につき急いで鍵を開ける。
コートも脱がずにソファに座り込む。

ずっと我慢していた涙がポタポタと
頬をこぼれる。でもなんで涙が出るのか自分でも理解出来なかった。

上条に責められた事なのか…
疑われた事なのか…
傷つけた事なのか…
それとも自分が不甲斐ないせいなのか…


自分の気持ちが分からないなんて、
本当は嘘なのだ。上条の事を好きなことは気づいていた。ただそれが一時的な感情なのかそうでは無いのかどうしても
分からないのだ。
それさえも言い訳なのかもしれない。

どうしてこんなにも踏み出せないのだろう。私を臆病にさせるものは一体何なのだろうか…
上条との関係に1歩踏み出て例えば恋人同士になれたとして…100歩譲って上条が私だけを選んでくれたとして…
私の好きはそれに値するのか?
私は本当に好きだから同期以上の関係を拒まなかったのか?雰囲気にのまれたんじゃないってそう言い切れる?

ドレスウォッチの時を刻む音が部屋に響く。元恋人との始まりの時も「好きな気がする」そんなあやふやな気持ちだった。…結果は?


「…なによ。何なのよ…これ以上、かき乱さないでよ。」


思わず呟くが一人の部屋に寂しく響くだけだ。

ただの同期でよかったのに…
もう今更元には戻れない。
それを思うとまた涙が溢れる。

ズルイと言われても構わない。
冷静に考える時間が欲しい。

鞄の中でスマホが震えている音がしている。恐らく上条からだろう。


「ごめん…」


震えているスマホを無視して、
バスルームに向かう。


もうシャワーを浴びて寝てしまおう。


どうしようもない自分に嫌気がさすが
これ以上は何も考えたくない。


もうやだ…
早く時間が経って全てが解決して欲しい。


そんな他力本願な事を考えながら
シャワーを浴び、夕食も食べず
ベッドに潜り込んだ。



< 94 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop