初恋を君に


そして次の日、
朝から雨が降り寒かった。
午前の仕事を終え待ち合わせ場所に向かう。
佐山くんは営業先から向かうとの事だったので駅前で待ち合わせだ。
7階の更衣室へコートと傘を取り
駅へ向かおうとエレベーターを待っていると後ろから声をかけられた。



「…文?外出なの?」



その声の主は避け続けた上条だった。
どうやら上条もエレベーターに乗るらしくいつも通り横に並んだ。



「…うっうん。外でランチなの。」



「へぇ〜。」


避け続けていた手前、
顔を見るのも気まずい。


今日はついてないなぁ…


エレベーターの扉が開き降りてくる人の波を見送り乗り込む。下りのエレベーターの中は上条と私だけだった。


「…何階?」


「あぁ…2階。」


そう言えば、企画課は午後から少単位のミーティングが入っていたな…上条のところだったんだ。そんな事をふと考えていると…


「…佐山と?」


「…えっ?」


「佐山とランチなんだろ。」


じっとこちらを見つめる上条に
気まずさを感じながら、
まぁ…と答えた時2階につき、扉が開いたが…なかなか上条は動かない。


「上条?」


「…今日の夜は?会えない?」


「えっ…」


「俺、文とゆっくり話したい。」


エレベーターが閉じそうになり、
急いで「開」のボタンを押す。


「ごめん…今日の夜は予定があるから厳しいかな。」


咄嗟にそんな嘘をついてしまった。
でもまだ無理…


「そっか…」


そう言うと、じゃあ。とエレベーターを降りて行った。
再び動き出したエレベーターの中で、
ため息をついた。


ダメだなぁ…
本当に上条とちゃんと話しないと。


エントラスを出て傘をさし駅へ向かう。
駅に向かいながら、さやかにメールを送る。


『今日の夜、空いてる?』


返事はすぐに来た。


『空いてる。しかも丈は帰って来ないから家おいで。』


渡りに船とはこう言うことだろう。
さやかの申し出に甘えて、
今日はさやかの家に泊まることにしよう。


『ありがとう。話聞いて欲しい。』


そう返事をして行く先を見ると、
遠目に佐山くんが待っているのが見えた。佐山くんもこちらに気がついたようで
軽く手をあげ会釈していた。

手の中でスマホが震え、
『OK。話聞くよ。』と言うさやかの
メールを確認すると少しだけほっとした心持ちになった。

さてと…と気合いを入れて、
佐山くんの待つ駅前へ急いだ。

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