初恋を君に


「佐山くん。ごめん。お待たせ。」


「いえ。俺も今来たところです。じゃあ行きましょう。ポルトガル料理って食べたことあります?」


そう言いながら、歩き出した佐山くんを
追いかける。


「えっ?ポルトガル…料理?」


「はい。この先にあるんですよ。美味しいですよ。」


佐山くんの少し後ろを歩いていく。


…歩くの早いなぁ。
上条は割とゆっくりだから…

そんな事をふと考えている自分に気付き
頭を軽く振って、その考えを振り払う。


「菊池さん。こっちです。」


少し先で微笑む佐山くん。


「今、行くわ。」


2人でお店の中に入って行った。
メニューを開いても見たことのない料理ばかり並んでいた。しかし何だか素朴な料理が多い。


「ここはフェイジョアーダがオススメですよ。豚バラ肉と豆の煮込みです。」


「じゃあ…それにしようかな。」


すみませ〜んとスタッフを呼び、サクサクと注文をしてくれた。店内はランチ時間で少しだけ混んでいる。


「菊池さん。今日の夜、何の用事があるのか聞いてもいいですか?」


キラキラな笑顔でテーブルの向かいから
佐山くんがいきなり切り込んできた。
思わず口ごもり、目を伏せた。


「あ〜ぁ。やっぱり見込みなしかー。」


「うっ…」


「そう言うことですよね?」


「ごめん…」


思わず謝ってしまう。
くみちゃんが言っていたことが頭をよぎった。ストロングホーク…
しかしどうやら意外にもあっさり逃がしてくれたそうだ。


お待たせいたしました。とスタッフが料理を持ってきてくれた。


「わぁ…美味しそう。」


「冷めないうちに食べましょう。」


ランチを食べながら色々な話をした。
仕事の話や佐山くんの上司の丈の話、
趣味の話…なかなか話が盛り上がった。


「美味しかった。それに…ご馳走までしてもらっちゃって、ありがとう。」


お店を後にして傘をさし並んで会社に向かう。


「いえ。俺から誘いましたから。当たり前です。」


「そう。後輩にご馳走してもらうなんて何だか変な感じよ。」


この信号赤から青に変わり渡り切れば
すぐ会社の社員通用口だ。


「…後輩ですけど俺だって男ですよ。」


「えっ?」


傘の滴を払っていたせいでよく聞こえなかったので聞き返すとなんでもないですよ。とニッコリ笑いながら佐山くんと
エレベーターへ向かう。
お昼休み終了すこしギリギリなので、
エレベーターを待つのは私達だけだった。

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