涙の雨と僕の傘
せっかく来てくれたんだから、上がっていくか聞いたけど、

やっぱり名瀬は断った。



一応、彼氏持ちだから。



そう言って、いつも名瀬は遠慮をする。

俺に対して、必要のない線を引く。


俺はそれが、すごく寂しくて、

そして、とても悔しい。



しかも雨が降ってきたから送ろうとしたのに、

傘を貸す間もなく、名瀬は雨の中、ひとり帰っていってしまった。



雨に濡れる彼女を見送るのは、これで2度目。



結局名瀬に何かあったのかは、わからずじまい。

どうせ例の彼氏のことなんだろうけれど。



俺はいったいいつになったら、


彼女を雨から守ってあげることができるんだろう。



もう、雨に濡れる名瀬を見るのは、最後にしたいと思った。






名瀬がくれた料理は家庭的で、とても美味しくて。



もう忘れつつある母さんの料理を思い出して、少し泣けた。


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