涙の雨と僕の傘
「そうならないように、がんばればいい」
俺は彼女の為に、
俺の為に、彼女を応援する。
自分よりも、彼女を。
それが俺の想いで、覚悟だ。
それは永遠に、彼女に届くことはないのかもしれない。
それでも、それを貫かなきゃ意味がないのだ。
「簡単に言わないでよ」
「別に簡単に言ってるんじゃないけどね。……はい、これ」
名瀬が観たがっていた、映画のチケットを渡した。
彼氏を誘えばいいと。
本当は、俺がきみを誘いたかった。
でもきっと、彼氏持ちだからと、いつもの理由で断られることはわかってる。
そう思ったのに……。
「……ありがとう。一応誘ってみる」
「うん」
「フラれたら、責任取って付き合ってよね」
そんなことを言うから、慌ててしまった。
いたずらに、俺を期待させないで。
想いよりも先に、欲が前に出そうになる。
結局、彼氏と映画に行けることになったらしいけど、
それを残念に思うより、ほっとしている自分がいた。
本当に、彼氏がダメだったら、俺と映画に行ってくれた?
その問いを、無理やり腹の奥底まで飲み込んだ。