彼女のことは俺が守る【完全版】
 私が匂い袋を手の上に置いて香りを楽しんでいると、少しだけ真剣な色を増した海斗さんの声がリビングに響く。それは私を現実に引き戻す強さを持ったものだった。海斗さんは言葉を選ぶように少しの間を空け静かに声を出したのだった。


「ロケに思ったよりも時間が掛かったから」


 そんな前置きと共に、海斗さんは大きく一つ息を吐く。そして、私を見つめる瞳は鋭さを増している。何か言い難いことを口にするかのような海斗さんに私も背筋が伸びた。


「あの男とあの元友達との結婚式はいつだった?あの時は一か月くらい先と言っていたような気がするけど。それに招待状の返事はどうした?」


 余程言いたくなかったようだった。苦虫を潰したような表情が私の目に映る。


「結婚式は今週末の日曜日に教会でするみたい。招待状は一応開けたけど、返事は出せなかった」


 普通の友達なら招待状を貰ったならきちんと返事を出すのが礼儀だというのは私も分かっている。でも、今回は私には書けなかった。普通なら返事がないなら、出席かどうかを確かめてきそうなのに、それもないのだから、最初から私の席は数に入ってないのだろう。


「分かった。でも、教会なら披露宴には出席出来なくても結婚式には参列出来るだろ。雅さんには俺から頼んでおくから、綺麗にメイクとかして貰って行けよ。あの男が悔しがるくらいに綺麗にして行くこと」


「でも」


「大丈夫。俺は里桜を一人にはしない。俺も付いて行くから」

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