彼女は僕を「君」と呼ぶ
「返事はまだいい。その代わりちゃんと考えて教えて」
「返事を?」
「そう。満島さんのどこが好きで…私が諦められる理由にして。それから、彼女と付き合ってないなら私も一度考えてほしい。今すぐじゃなくても今後、葉瀬君の隣に居れるか」

そう言い残すと、久野は日誌を片手に教室を出て行ってしまった。

告白とはもっと甘い物を想像していた。
昇降口の影、体育館裏、放課後の教室。あぁ、場所だけはランクインしていたが、せっつかれた様な、突き放された様な。

背もたれに力なく体を預け、そこで漸く、顔に熱が集まるのを感じた。

おれは、彼女の何処が好き?

背中を預けて天を仰ぐ。升目の天井が均一に並んでいた。

彼女も一体、小野寺教諭のどこを好きなのだろうか。人はどうして人を好きになるんだっけ。
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