そんな結婚、あるワケないじゃん!
羽田が名前を呼んだのは聞こえた。

…でも、答える気にならなくて無視した。


真新しい布団に掛けたカバーは、糊が効いててゴワゴワした感触だったし、おろしたての毛布はフカフカし過ぎて妙に寝心地が悪い。
枕も今までとは違ってなんとなく落ち着かないし、ペソが居ないから余計に寂しさも増す。

そんな中で眠りに落ちれる筈もなく、私は悶々とさっきの美人のことを考えた。



元カノのことは羽田から聞いて知ってる。

派遣で働きだす前は、私と同じパートタイマーの仕事をしてたそうだ。
金銭的なことととか将来的なことを考えて派遣社員として働きだした先のオフィスで、羽田以外の男性を好きになり結婚した。


「あの頃の俺って、きっと子供っぽかったんだと思う。女1人を満足させられるほどの給料を貰ってたワケじゃないのに、人一倍独占欲だけは強かった。アイツは俺のそんなとこが段々と鬱陶しくなったんだ。オフィスで出会う男の方がステキだ…と、よく比べられたから…」


元カノが好きになった男性は、羽田よりも年上だったみたい。
羽田に比べたら大人な感じの人に、元カノが惹かれたのも解らないではないけど……。



……どうして比べたりしたんだろう。
羽田は羽田以外の何者にもなれないのに……。



(どこがそんなに良かったのかな。顔?それとも年収?……)


私が言うのも変な気がするけど、羽田は案外とイケメンだと思う。
一緒にいると女子がチラチラ振り向くし、中には「きゃっ!」と声を上げる人もいる。

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