キミが欲しい、とキスが言う
「やっぱりわかる?」
「似てる、よね。目元とかそっくり。並んでいると特に」
「そうよね。分かるわよね」
他人の目でさえこうなんだ。本人たちに通じるところがあって当然。
でも、彼との経緯をきちんと伝えるには内容が刺激的過ぎやしないだろうか。
浅黄はまだ子供だ。どこまで話していいものか分からない。
美咲ちゃんが、申し訳なさそうに私を見た。
「……立ち入ったこと聞いてもいい? 彼、浅黄くんの存在をはじめて知ったみたいだったけど、どうして別れちゃったの?」
「別れてから浅黄ができたことに気づいたのよ。そのとき彼はアメリカに戻っていて、伝えようがなかっただけ」
「でも、茜ちゃんを探してたって言ってたわよ?」
「だからそこがおかしいのよ。私を捨てたのはあの人の方。なんで今更責められなきゃならないのか納得いかないのはこっちよ」
はっきり聞いた『連れていけない』という言葉は今も耳にこびりついている。
「でも、……なんか、本気そうだったけど」
「いいの。彼は過去の人よ。この話やめましょう? そろそろ戻らないとね」
私は頬を軽く叩いて、営業スマイルを顔に張り付けた。
会議室に入ると注がれる興味本位の視線も、笑顔で跳ね返す。こちらが堂々としていれば、周りの方が勝手に気圧されていくものだ。
帰るまでの数時間、何を聞かれても笑顔でやんわりと受け流す。
それでも、浅黄にどう説明したものか、いい考えは浮かばなかったんだけど。