キミが欲しい、とキスが言う
「今、俺たちは浅黄を探しています。悪いけど、後にしてください」
「アサギが? どうかしたのか?」
「姿が見えなくなったので探しているところで……あ、茜さん!」
馬場くんが説明している途中でふたりの脇をすり抜けて駈け出した。
ここでダニエルと話し込んでる暇なんてない。浅黄を探さなくちゃ。
あたりを確認しながらアパートまで走った。夕暮れで、いつもは目立つ浅黄の金髪も見えづらい明るさになっていた。
後ろから、馬場くんとダニエルもついてくる。
彼に家がばれるのもまずいかとは思ったけれど、浅黄の安否の方が大事だ。
二階に駆け上がり、ドアを確認するも部屋の鍵はかかったままだ。もちろん、浅黄の姿は見えない。
一応中も開けて確認してみたけれど、誰もいなかった。
「いない。……じゃあどこ?」
追いついてきた馬場くんが、息を荒くしたまま私の背後に立つ。
「幸太の家に戻ってはないかな。それか親父さんのところか」
「行ってみるわ」
「手分けしよう。俺は親父さんちの方を見てくる」
「じゃあ私は幸太くんちに」
「あの、アカネ」
所在なげ佇むダニエルが私の行く手を阻む。
こんな時になんなの、と舌打ちしたい気持ちにもなったけれど、浅黄を探すのに人手は多い方がいいかもしれないとも思った。