キミが欲しい、とキスが言う

 帰国の日まであと二ヶ月というところまで来ても、彼は私に何も言わなかった。
帰国を機に別れればいいのだろうか。でも別れたくないくらいに私は彼を好きだった。
だからと言って、一緒に連れて行って欲しいかと思えばそれも違う。

自分の気持ちが定まらないから、こちらから問いただすわけにもいかない。

おそらく彼もそうなのだろう。
私と別れるか、連れていくか、覚悟ができていないのか、時々口ごもってははっきりした言葉をくれなかった。

 そして帰国が翌週に迫った三月。
彼は、最後に私に委ねたのだ。


「……本国に帰ります。アカネは、どうします?」


何も提示してくれないのに、どうしますもこうしますもないだろう。
私の希望はただ一つ。今の状態を続けること。


「行かないでって言ったら、行かないでくれるの?」

「……ゴメンナサイ。それは出来ない」


目を伏せた彼に、いら立ちが沸き上がった。

だったら、私に委ねたりしないでよ。

私はあなたの言葉に従う。
別れたいなら別れるし、着いて来いというなら着いていく。
でも、あなたにその覚悟がないなら着いてはいけない。


「あなたに従うわ。どうしたいの」

「僕は、アカネを愛してる」


そのまま、彼は私の唇をふさいだ。

愛してるの中身はなに?
一緒について来いということ?

問いかけはキスで誤魔化されて言葉にならない。

切なげな瞳で私を見つめた彼は、いつもより激しく私を抱いた。
不安が余計性欲をあおって、私も声を抑えることなく彼を求めた。

< 27 / 241 >

この作品をシェア

pagetop