キミが欲しい、とキスが言う
帰国の日まであと二ヶ月というところまで来ても、彼は私に何も言わなかった。
帰国を機に別れればいいのだろうか。でも別れたくないくらいに私は彼を好きだった。
だからと言って、一緒に連れて行って欲しいかと思えばそれも違う。
自分の気持ちが定まらないから、こちらから問いただすわけにもいかない。
おそらく彼もそうなのだろう。
私と別れるか、連れていくか、覚悟ができていないのか、時々口ごもってははっきりした言葉をくれなかった。
そして帰国が翌週に迫った三月。
彼は、最後に私に委ねたのだ。
「……本国に帰ります。アカネは、どうします?」
何も提示してくれないのに、どうしますもこうしますもないだろう。
私の希望はただ一つ。今の状態を続けること。
「行かないでって言ったら、行かないでくれるの?」
「……ゴメンナサイ。それは出来ない」
目を伏せた彼に、いら立ちが沸き上がった。
だったら、私に委ねたりしないでよ。
私はあなたの言葉に従う。
別れたいなら別れるし、着いて来いというなら着いていく。
でも、あなたにその覚悟がないなら着いてはいけない。
「あなたに従うわ。どうしたいの」
「僕は、アカネを愛してる」
そのまま、彼は私の唇をふさいだ。
愛してるの中身はなに?
一緒について来いということ?
問いかけはキスで誤魔化されて言葉にならない。
切なげな瞳で私を見つめた彼は、いつもより激しく私を抱いた。
不安が余計性欲をあおって、私も声を抑えることなく彼を求めた。