キミが欲しい、とキスが言う
いじめとは言えない些細な行動なのかもしれないけれど、これが毎日続いているのだとしたら、どれだけ辛いだろう。少量の毒を毎日飲まされているのと同じような状況だ。
転んだと言っていたひざのケガも、よく壊してきた傘も、もしかしたら……と思ったらと寒気がした。
その日家に帰ってから、私は浅黄を問い詰めた。
でも浅黄は「いじめられてなんかない」と唇を結ぶ。
「おかあさんのかんちがい」と涙一つ見せずに言い切られたら、それ以上の追求は子供を信用していないと言っているようで、何も言えなかった。
学校でのことが知りたくて、二年生になってからはPTAの役員を引き受けた。
そこで、幸太ママと親しくなってから当時のことを教えてもらえた。
浅黄の髪の色はやはり目立つから、最初からみんな特別な目で見ていたらしい。
加えて浅黄はオドオドしていて人の目をうかがうところがある。遊んでいても、どこか怯えた様子の浅黄は、無邪気に遊ぶ同級生の中にうまく入っていけなかったのだそうだ。
幸太くんは時々遊んだりしてくれたらしいけれど、気づいた時には、浅黄はクラスで孤立していたのだそう。
「幸太は浅黄くんの事好きなんだって。どんなに失敗しても絶対笑わないんだって小さい時から言ってた。正直、仲良くするのやめなさいって思った時期もあるよ。悪いけど、お母さんが夜の商売しているって聞いたら、気分悪かったし。でも浅黄ママ、話したらすごくいい感じだし。PTA役員、大変だけど良かったんじゃない? 誤解してる人たち、分かってくれるかもよ」
幸太ママはそう言ってくれた。
でも、やっぱり私の職業もいじめの原因の一つなるのかと思ったら、気が重たかった。
今はまだ子供たちはよくわからないだろう。
でも高学年になってくれば? そのとき浅黄がどう傷つくかと思うと、考えるだけで気が滅入る。