キミが欲しい、とキスが言う

「……だから、幸太くんには感謝してるの。今年に入って同じクラスになって、幸太くんがいてくれたからクラスにもすぐ馴染めたみたい。浅黄、すっごく元気になってホッとしてる」

「ふうん。でももう大丈夫なんじゃない?」

「うん。そう見えはする、……けど」

「けど?」


おうむ返しに問い返されて、言葉に詰まる。

イジメに気づいて浅黄を助けてくれたのは私じゃない。幸太くんだ。
浅黄が助けを求めたのも、私じゃない。

私には、浅黄がどのくらい傷ついたのか、どのくらい癒されたのか、まったくわからない。


「分からないから。幸太くんに任せてる」

「……どういうこと?」


馬場くんが身を乗り出す。顔を見られたくなくて、私はわざと背中を向けた。


「私は気づけなかったもの。浅黄は私にはいじめられているなんて一言も言わなかった。あの子を助けてくれたのは幸太くん。だから、幸太くんがもう大丈夫って判断してくれるのを待ってる」

「幸太がそこまで判断できるかよ。ガキだぞ?」

「子供でも私よりしっかりしてるわ」

「そうかな」


馬場くんはまだ何か言いたそうだったけれど、言葉を考えあぐねているらしく、それ以上追求してくることはなかった。

私は私で、なんでこんなこと話してしまったんだろうという後悔がじわじわ沸き始めていた。
居心地が悪くなって、今日こそは馬場くんより先に部屋に戻ってしまおうと、扉に手をかける。

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