キミが欲しい、とキスが言う
私は結局、運転免許もとらなかった。都会に住んでる分には不便ないって思っていたけど、子供ができてみれば車があると便利だったなぁと思う。ホント計画性がないなと、最近ふとした瞬間に思う。こんなお母さんで浅黄は苦労しているだろう。
「特別リクエスト無いなら、星を見に行きません?」
「昼に星?」
「プラネタリウムですよ」
「ああ。……いいわよ、どこでも」
プラネタリウムなんて、子供の時の校外学習以来、行ったことがないかもしれない。
そもそも私とそんな静かな場所はつながらないのか、歴代彼氏の誰もそんなところに連れて行ってくれなかったしな。
「馬場くん、星好きなの?」
「いえ。あんまりにも思いつかないから仲道さんの奥さんに色々聞いてきました」
「へぇ、仲道さんの奥さんってどんな人?」
「かわいい感じの人ですよ。同い年だって話ですけど、仲道さんより若く見えました」
「ふうん。お子さんいるって言ったっけ。いくつ?」
「ああ。えっと、四歳と六歳って言ったかな。ふたりとも今日は保育園ですって」
「じゃあ仲道夫妻こそデートの日だったんじゃないの?」
「いや、奥さんは仕事で。朝、あの後すぐに車借りに行ったんですけど、運転練習がてら送っていけって言われて、奥さんのパート先まで送って行きました」
旦那様を差し置いて、馬場くんに送らせちゃったのか。
かわいい人って言ってたけど結構面白い人なんだな。
馬場くんも、無口って思っていたけど、こうしてふたりきりになれば、結構話してくれるんだ。
何話そうかって考えていたけど、思ったより会話が途切れなくて助かる。
なんか、いいな。
こんなふうに、“しなきゃならないこと”を考えなくてもいい時間も、すごく久しぶりのような気がする。