キミが欲しい、とキスが言う


 いつもよりも薄い色のアイシャドウにグレイスローズ色の口紅。それに幾何学模様のワンピースと日焼け防止用のストール。どうせ店に行けばメイクも直すし服も着替えるので、久しぶりに落ち着いた印象でまとめた。

真昼間に“遊び”をメイン目的にして出かけるのは、ものすごく久しぶりかもしれない。浮かれる気分を抑えることはできないのはそのせいだろう。
けっして、相手が馬場くんだからというわけではないはずだ。

用意を整え階段を降りると、青いワンボックスカーが路駐されていた。運転席から、私を見つけた馬場くんが手を振っている。


「大きい車なのね」

「仲道さんちお子さんいるから。ほら、チャイルドシート」


確かに、後部座席にはチャイルドシートが二つ鎮座している。それだけでいっぱいといった感じで、三列目にはものが遊び道具らしきものも積んであった。

私は助手席に乗りこんだ。車高が高いから、パンプスで上るのは大変だったけれど、座ってみれば視界が広がった感じがして楽しい。シートベルトを締めたのを確認した馬場くんは、ゆっくりと車を走らせた。


「普段、運転するの?」

借り物の車と言っていたけど、運転がおぼつかないという感じはない。

「実家に帰れば……ですかね。でも運転は好きですよ。免許とりたての頃とかは毎日のように乗ってたし」

「ふうん」


確かに、滑り出しもスムーズだったし、車線変更も難なくやっているみたい。安心して、背もたれに背中を預ける。
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