政略結婚から助けてくれたのは御曹司様

謎な人





「志津香、すっごく綺麗よ」


迎えに来てくれた志摩子さんは
うん、うんと満足そうな笑みを浮かべていた


行きましょうか、と玄関に行くと
父が帰ってきた
久しぶりに見る父


「あら、おかえりなさい。今日は志津香を借りますね。帰りはきちんと送りますのでご心配なく」


志摩子さんに続き、私も出ようとすれば
父に呼び止められてしまった


「志津香、気をつけるんだぞ。帰ってきたら、私の部屋に来るように」


それだけ言って、父は家の中へ
私が玄関から出ようとした時
母の嬉しそうな声が聞こえた


もう、早く出よう
父にも、母にも会いたくない



「志津香、早くっ!」


志摩子さんが車の中から呼んでいる
私は急いで志摩子さんの車へ乗り込んだ

せっかくの気分も
父の一言で劇沈みだ


小さくため息をつく



総会の会場まで
志摩子さんの一押し御曹司の話を
永遠聞かせられる羽目に……


志摩子さんが押してくるなら
その人が私の相手になるんだろう
志摩子さんは祖父と仲がいい
多分、二人で決めたんだろう


あの家から出れるなら
なんでもいい。


志摩子さんの話を聞いていたら
あっという間に会場へ着いた

窓から眺める光景
会場に入っていく人たちは
誰もが輝いていて、楽しそうだ
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